第二十九エナジー 「報告と相談」

「わっ。俺、消えた!!」

ここは、地球の東京町田市の竜牙の家。

アバターではない本物の竜牙。

竜牙の本体は、腹痛で寝込んでいた。

竜牙と竜牙のアバターは意識だけ共有している。

竜牙がやりたいことをそのままアバターがやってくれる。

竜牙のアバターの考え、視点がそのまま本物の竜牙にも入ってくる。

だから、惑星ダイナソーでの恐竜祭の戦いも全て竜牙にはわかっている。

まるで自身がその場にいたかのように。

「やっぱ、俺自身をバンビスポート(爆撃)してしまうとすげー威力だけど、俺のアバターは死んでしまうんだな。一つ勉強になったよ。えっ。じゃあ俺って負けたの?俺が負けたら、愛や良太はどうなる?イタタタ。とりあえず、愛と良太にスマホ打っとこ。」

竜牙は、スマホの通話&チャットアプリ「リンリン」を使った。

「えーと、愛と良太のグループでトークしとこ。『愛、良太大丈夫か?とりあえず、地球戻ったら連絡くれよ。俺、そっちにいく手段ねーから。』こんな感じかな?アルデランスに傷を治してもらったら、さこがすぐに地球に返してくれると思うんだけどな~。とりあえず、腹痛いから寝る!!」

竜牙は腹痛のために再度寝た。

それから二日が経った。

竜牙の腹痛はマシになってきた。

スマホでリンリンのアプリを開いた竜牙。

やはり良太も愛も既読がつかない。

二日も経ってさこに良太と愛を地球に戻してもらっていないということは、覚悟をしなければならないということだ。

二人が死んでしまったということを。

「さこのやつも地球に帰ってこないし、向こうの星ではどうなってんだろ?さこだったら地球に戻ってきて教えてくれそうな気がするんだけどな~。まよのやつが邪魔してるんだろうな。あいつワガママのガキだから。」

ヴオン。

竜牙は自身のアバターを出現させた。

まこもいない。

さこもいない。

愛も良太もいない。

このメンバーがいなければ、エナジーについて相談できる人がいない。

相談するとしたら奴らしかいない。

竜牙のアバターは、宙に浮き、空を飛び始めた。

目指す場所は、横須賀。

そう横須賀のエナジー部隊の基地に。

竜牙は町田市から30分ほど飛行し、横須賀のエナジー部隊の基地についた。

初等部がある運動場に竜牙が着地しようとした。

バチン!!

基地中に巨大なシールドが張られていた。

竜牙は弾き飛ばされた。

「えっ。前はこんなんなかったのに。」

シュン!!

何者かが高速でウガンドロンして、竜牙の前に現れた。

「ん?なんだあんた?この学校の先生か?」

「そうだ。お前こそ何者だ?子どものようだが、うちの初等部のものではないな。そして只者ではない。私では、キツイか。」

その男は体育の授業の先生のようにジャージを着ていた。

竜牙を前に臨戦態勢になり、エナジーパワーを膨れさせていた。

ズズズ。

「え~。やるの?俺、人間とは戦いたくねーな。」

「この侵入者が!!くらえ!!エナジーショッ…。」

「やめなさい!!葛原!!」

そこに岡田先生がやってきた。

高等部の先生で愛の担任だ。

胸元を見せるような服を着ており、いつも短いスカートを履いている。

「そいつが唯竜牙よ。そんなエナジー纏っている小学生は唯竜牙しかいないわ。」

「えっ。こんな馬鹿面のガキが唯竜牙!?もっと凶悪そうなやつだと思っていた。」

「葛原はちゃんとヤマタノオロチ関係の報告書読みなさい。ちゃんと唯竜牙のこと書いてあるわよ。」

葛原たかし。

中等部の先生。

基礎体力、エナジーパワーの授業が専門だ。

歳は、27歳。

身長177cm。

体重71kg。

頭は刈り上げており、スポーツマンタイプで爽やかな印象だ。

「その唯竜牙、このエナジー部隊の基地になんのようだ?」

「前、来たとき、こんな馬鹿でかいシールド張られていなかったのに、なんで今日は張られてるの?

「ちょっと岡田先生みた?こいつ俺の話全然聞いてない。」

「もう。唯竜牙が馬鹿なことは報告書に書いてるって言ったでしょ。今からでも目を通しに行きなさいよ。で、唯竜牙。この基地中にシールドを張っている理由ね。なんであんたにそんなこと教えなきゃいけないのよ。」

「なんでダメなんだよ~。俺が悪者みたいじゃんか~。」

「えっ。充分悪者よ。」

竜牙と岡田先生が不毛な言い争いをしていると、エナジー部隊の総隊長の山本がやってきた。

「岡田。いいぞ。俺が唯竜牙と話す。」

「さすがおっちゃん!!話がわかる。」

「おっちゃん!?ちょっと私、本当に唯竜牙許せないんですけど、総隊長?」

「岡田と葛原は授業に戻れ。唯竜牙は俺が対応する。初等部は自習にする。」

「は~い。」

「総隊長!!よろしくお願いします。」

岡田先生と葛原先生は、自身の受け持つクラスに戻った。

「さて、唯竜牙。演習場のベンチに行こうか。」

「えっ。座らなくても俺の体力無限なんだけど。」

「…。」

総隊長の山本は無言で竜牙をベンチに連れて行った。

ベンチに座った山本。

「宇宙を粛清するものの『さこ』にどこかに連れて行かれたんだろ?鈴中、中西、加賀美、長谷はどうした?」

その名を聞いた瞬間、竜牙は黙り込んでしまった。

「おい。唯竜牙。」

「お…。おれの…。」

声が出ない。

口にするのがこわいんだ。

口にすると現実になりそうな気がして。

俺はまだ信じていないから。

「四人になにかあったか?まさか殉職したのか?長谷の能力ならまず死ぬことはない。中西も『ワールド』が使えるから、大丈夫だ。とすれば、鈴中と加賀美か。鈴中は高等部に入ってから技も多彩になったと報告を受けていたばかりだったが…。」

「ちがう。みんな…。」

泣きそうになりながら、竜牙は言った。

「なんだと!?」

さすがの山本も想定外の出来事に驚きを隠せなかった。

竜牙はしゃべり下手にも関わらず、惑星ダイナソーで起きた数日間を山本に話した。

「まさか。長谷が死ぬとは。考えもしなかった。あいつのエナジー能力が無敵だと信じたから行かせたのに、こんなことになるんだったら行かせるべきではなかった。中西もバカだ。さっさとワールドを使っておけば、良かったものを…。」

山本の嘆きは竜牙を苦しめるだけだった。

「俺が悪いんだ。俺が愛や良太を恐竜に会わせてやるって言ったからこんなことになったんだ。俺がみんなを殺したんだ。」

「おいおい。唯竜牙。それを言うなら宇宙を粛清するものの『さこ』にも責任があるだろう?あいつは『まこ』よりも優しさがある気がしたのだが。」

「おっちゃんは『まこ』を知ってるの?」

「ああ。この横須賀のエナジー基地。一ヶ月ほど前に半壊したのを鈴中たちから聞いていたか?」

「ん?聞いてたかな。わかんない。」

「地下に会議場があるんだが、その会議場を一瞬にして破壊したのが『まこ』だ。」

「は?俺、そんな話、まこから聞いてないぞ。」

「奴らからしたら些細なことのようだ。エナジー部隊の精鋭も一瞬にして死んだ。この横須賀のエナジープランは、まこの襲来により、八割亡くなった。」

「殺したってこと?まこがそんなことするなんて…。」

「殺すつもりはなかったのかもしれん。ただ奴らの力は馬鹿デカすぎる。地球ではエナジーを封じているようだが、少しでもエナジーを放出させてはダメだ。俺ら、エナジープランが一瞬にして死滅してしまうほどの力の持ち主だった。」

「それで、基地中にシールド張ってたのか。」

「まあそれも一つの理由かな。まこやさこにとってシールドを張ろうがまるで意味のないことだがな。」

「そっか。俺も向こうの星で危ないことがあっても、さこが助けてくれるかもって内心思ってた。でも違ったんだ。愛や良太が死にかけて、さこに助けを求めても助けてくれなかった。」

「その時、さこはなんて言っていたんだ?」

「恐竜たちも同様に死んでいる。さこが竜牙たちだけを助けたら不平等だって言っていた。俺は、人間の命が一番大事って思っていたから、さこの言うことがよくわからなかった。」

「根本的に価値観が違い過ぎるな。俺には何も言えん。その惑星ダイナソーに行く手段も俺たちにはない。鈴中や中西、加賀美、長谷の死体を回収することもできん。」

「じゃあどうするの?愛たちの親には何ていうの?」

「エナジー部隊に所属している以上、殉職の危険は常に隣り合わせ。保護者の方もそれがわかって、うちの部隊に入隊させている。だが、自分達の子どもが死んで悲しまない親はいない。親には俺から説明する。唯竜牙は何も心配しなくていい。」

「でも、俺、何かしないと…。どうしたらいい?おっちゃん。」

「強くなるしかないだろ。同じことが起こらないためにも。強い敵が現れても守れるほど強く。今、お前にできるのはそれだけだ。さっきの惑星ダイナソーの話を聞く限り、お前の強さは日本で一番強いエナジープランと言っても過言ではない。人間限定の話だが。」

竜牙はアバターでありながら、涙をぽとぽと流していた。

「わかったよ。おっちゃん!!強い敵はみんな俺が倒せばいいんだな!!がんばろーと!!」

そう言って、竜牙は空高く飛んで行った。

「元気が出たか。俺としたことがいずれ敵になるかもしれないやつにな。それにしても惜しい四人を亡くした。岡田も怒るだろうな。」

竜牙は上空高く飛び、太陽の光を目一杯浴びた。

「よ~し!!太陽の光浴びまくって、ラビの力を上げるぞ~!!」

夜になった。

アバターではない竜牙自身。

総隊長の山本に自分の気持ちを話せたことでスッキリしていた。

今夜はぐっすり寝れるような気がする。

愛、良太、ごめん。

二人のことは忘れない。

でも、今夜はぐっすり寝る。

俺、二人の分まで強くなるから。

そう思い、ベッドに入った。

その瞬間、スマホのリンリンの着信が鳴った。

「えっ。」

メッセージをみた。

「竜牙。遅くなったけど、今、地球に帰った。色々心配かけてごめんね。体は大丈夫だから。あんたのことだから、もう寝てるわよね?おやすみなさい。」

「竜牙!!俺と愛は大丈夫だから!!マクロのアルデランスに完全に体を治してもらったから。明日から修行も勉強もできるから!!また連絡する。」

あいつら、生きていたんだ。

竜牙はまた泣いてしまった。

竜牙は今回の戦いで命について、深く考えることになった。

つづく。


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