第二十六エナジー 「竜牙の治療」

竜牙は右腕がちぎれ、腹部が貫通し、全身血だらけの愛を控室まで運んだ。

愛から応急処置してもらった良太も控室で横たわっている。

良太の意識も戻っていない。

竜牙は愛に声をかけた。

「愛!!大丈夫か!!しっかりしろ!!」

「はあはあはあ。ガボッ。」

愛の意識もなく、吐血が続く。

腹部が貫通しているためだろう。

「クソ。血がとまらねえ!!」

愛のお腹の傷口を必死で抑える竜牙。

「長谷の兄ちゃん。高校生の姉ちゃん。誰か愛を治せるやついないのかよ!!良太!!起きろ!!クソ。どうしたらいいんだ!!あっ。」

竜牙は何か思いついたようで、良太と重傷の愛を控室で寝かせたまま出て行った。

玉座で座っているまよがそろそろ恐竜祭に飽きてきたようだ。

「さこちゃん。まよちゃん、ねむたくなってきた。ふわ~。」

「おう。寝ろ寝ろ。寝る子は育つ。試合も退屈だもんな。」

「ぐぅー。」

まよは寝た。

そのとき、竜牙が闘技場の玉座のさこたちの元へきた。

「よお。竜牙。必死そうだな。」

「さこ。助けてくれ。愛が死にそうなんだ。お前だったら愛の傷治せるんだろ?」

「当たり前だ。あんな傷一瞬で治る。」

「じゃあ頼むよ。俺たちの仲間死んじゃって、治せるやついないんだ。」

「お断りだ。」

「は?なんでだよ!!愛が死ぬんだぞ!!」

「そんなことさこが知ったことじゃない。弱い愛が悪いだけの話だろ?」

「子どもなんだから仕方ねーだろ。」

「子どもだけで覚悟の上で愛はエナジー部隊にも入隊しているだろ?それは殉職する可能性がある覚悟も含まれているだろう。ここで愛が死ぬということはそれまでのことだ。」

「愛が死んだらみんな悲しくじゃねーか。お父さん、お母さん、学校の友達、生徒会長だし、学校で困るし。」

「ハハハ。じゃあ竜牙の仲間も恐竜たち殺したよな?それはどうなるんだ?恐竜たちにも親がいるぞ。友達、仲間がいるぞ。同じじゃねーのか?」

「同じじゃねーよ!!人間の命の方が大事に決まってんじゃねーか!!」

「いやいやわからんな。竜牙。お前は根本的に分かっていない。宇宙的に物事を考えてみろ。地球の人間の命が大事なのは、お前たち人間が地球を支配していると思っているからだ。地球で一番強いのは人間。だから人間によるルールを重んじている。地球にいるときに思ったんだ。地球では環境問題が取り上げられていただろ?あれが実に面白い。温室効果ガスによって地球の温度が上昇。それによって起こる災害。あれって地球は何もこまんねーんだな。困るのは人間なんだ。人間が生活しづらくなる。それだけの話なんだ。ニュースをみてて笑ってしまったぜ。さこは。」

「なんでそんなこと言うんだよ。さこ。俺たちの味方じゃないんのかよ。」

「さこは平等だ。おまえたちミクロに対してな。愛を治療するということは他の恐竜たちにフェアじゃないだろ?恐竜祭に出ている恐竜で傷だらけになりながらも、続けて試合に出ているぞ。」

「理解できないよ。俺、どうしたらいいんだ。」

「さこが手を出すのは反則だ。だったら一つだろ?竜牙。お前がやれ。愛から医術エナジーを聞いていたんだろ?良太を治すとき、みてもいただろ?お前が愛を治せ。それが一番だろ。」

「そんなこと言ったって。クソ。」

竜牙はこの場を去り、愛たちの元へ戻った。

その会話を聞いていた恐竜人間のアルデランスは。

「さこ様。意外でした。鈴中愛を治療されるとばかり思っていました。」

「バカいえ。するわけねーだろ。死んでいった他の恐竜たちに悪いだろ?これはミクロの戦いなんだからミクロに全て任せるもんだろ?」

「さこ様のおっしゃる通りでございます。」

控室に戻ってきた竜牙は。

「そうだ。俺のエナジーだったらできるはずだ。前の武器を作ったこともある。治療もできるはずだ。」

竜牙は愛の体に両手を添えた。

プワッ。

温かいエナジーを出した。

「このエナジーでまず愛の血を塞ぐ。あれ?愛は良太の治療しているとき、なんて言ってたっけ?血を作るとか言ってたな。よし!!」

竜牙は愛の血液型がA型だと知っていたので、A型の血液を作ろうとエナジーで念じた。

それと同時に右腕の傷口の止血、貫通したお腹の止血も行おうとした。

しかし。

「あれ?うまくできない。俺、そもそも人間の体の構造がよくわからない。愛が前、言っていた医術エナジーを行う者はお医者さんになることだって。じゃあ俺にできるわけねーじゃん。」

「…よ。」

「ん?何か聞こえる。」

「違うよ。大丈夫だよ。」

「何だ?誰が話してる?」

「僕は愛の体の細胞だよ。僕のいう通りにやってみて。」

竜牙はエナジーで愛の体の細胞の声が聞けるようになった。

「どうしたらいい?止血、血液製造、臓器復元それで命は繋げるんだな?」

「そうだよ。君の力では完全回復まではさせられない。でも、応急処置を施せる力は持ってる。まず、血液を作り続けて。必要だから。」

「こうか?」

ブミブミ。

「もっと鉄分を含ませて。栄養がないと力でないよ。」

「え~。鉄分?なんか強い感じかな?こうか?」

ブミブミ。

「うんいい感じ。次は一番命に関わる腹部の貫通を治そう。破損してしまった小腸を復元してみて。」

「小腸ってあの長いのかな?小腸を作り出すってことだよな?『シリンティ』(物質創造化)!!」

「ちょっと全然ダメ。こんな硬い素材を体内に入れる?普通?あんたバカじゃない?」

「うわ。この細胞どんどん愛っぽくなってる。じゃあこの小腸はどう?シリンティ!!」

プワッ。

「もっとやわらかく!!他の臓器もあるからそんなんじゃダメ!!」

「もう。神経使うな~。」

「エナジー使えない人たちはもっと頑張ってるつーの。」

「いちいちうるさい愛の細胞。」

とりあえず、愛の腹部の復元はできた。

腕の傷は止血だけ行った。

竜牙の治療では応急処置止まり。

このまま放置するのは危険だ。

愛と良太はちゃんとしたお医者さんに一刻も早く診せなければならない。

竜牙復元した臓器も本物ではない。

エナジーを使っている竜牙アバターが消えてしまうと、臓器の復元で使っていたエナジーの効果もなくなる。

次の戦いで竜牙アバターがやられるようなことになれば、全員死ぬということ。

「さっさと恐竜祭終わらせてやる!!トーナメントをみる限り、次に俺とあたるのが、良太かアロサウルスだった。そいつらは引き分けだから、あれ?次は俺、決勝戦だ。相手は?」

闘技場のBブロック舞台では準決勝が行われていた。

ティラノサウルスのパビューダと、高校生の長谷を殺したコンプソグナトゥスのアリネサだ。

コンプソグナトゥスのアリネサの体格は人間くらい。

ティラノサウルスとの体格差は10倍くらい違う。

だが、体格差を活かしてスピードで勝負を挑むアリネサ。

シュンシュンシュン!!!

「速いな。」

「この恐竜祭はいつもお前らティラノサウルスの独壇場だ!!俺らは日々、技を磨いている!!ティラノサウルスの天下に終止符を打ってやる!!『バルーパ』(氷のブレス)!!」

アリネサは素早い動きでパビューダを攪乱しながら、氷のブレスで動きも止めようとしている。

カキン!!

「うっとうしい!!『アギャ』(炎のブレス)!!」

パビューダは凍った箇所を炎で溶かしつつ、アリネサを炎で焼き尽くそうとした。

パビューダの炎は広範囲を焼き尽くす。

アリネサには炎の攻撃が遅くて当たらない。

アリネサはパビューダの背後にいた。

「死ね!!『カンパン』(振動波)!!」

アリネサはパビューダに口で突きつつ、エナジーマジックの「カンパン」(振動波)も食らわせた。

ドフ。

「うぐ。」

ティラノサウルスの巨体がぐらつく。

そこにさらにアリネサの「バルーパ」。

カキン!!

パビューダの足元は完全に凍りついた。

「『カンパン』を心臓に食らわせてやる!!」

アリネサはパビューダに接近し、心臓をエナジーマジックで攻撃し振動波により、心臓を強制的に停止させて息の根を止めようとした。

アリネサがパビューダの心臓を攻撃しようとした瞬間。

ボオオオオオオオ。

パビューダのシールドが巨大な炎を纏った。

「『アギャ・シールド』(炎のバリア)。」

「あちゃああああああ~!!(熱い!!)」

全身火傷で叫ぶアリネサ。

火傷によりスピードが鈍ったアリネサをパビューダは逃さなかった。

ガブッ。

ブチッ。

ティラノサウルス最大の武器、噛み砕く力。

エナジーなしでも噛み付く力が数トンあるにも関わらず、エナジーパワーで強化されたアゴと牙の力は計り知れない。

アリネサのシールドの防御力は抗う術がなかった。

きゅうりを人間の口でいい歯応えでたべれるように、パビューダにとってアリネサもいい噛み味だった。

パビューダはアリネサの上半身を噛み切ったと同時に食べてしまった。

「しまった。本能的に反射的に食べてしまった。よいしょ。」

残ったアリネサの下半身を上空に掲げた。

「準決勝。パビューダ勝者!!次は、地球人の『唯竜牙』対ティラノサウルスの『パビューダ』!!舞台の整備をするのでしばらくお待ちください。」

ついに決勝戦。

パビューダと竜牙の戦い。

竜牙は愛の敵を討つことができるのか!?

つづく。


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