僕は仕事に行くのが好き。
家の中にいたって出会いなどない。
一人で右手を動かしているだけだ。
心から癒されなどしない。
仕事に行くのだけが癒し。
うそ。
仕事に行くまでの通勤途中が至福。
僕には気になっている人がいる。(いつもそれ)
マンションの建設現場のおっちゃんだ。
緑色の作業着を来ていて、ガタイはよくて、スキンヘッドで一見怖そう。
だけど、目は大きくてなんかかわいい。
しかも胸ポケットにはミッフィーのボールペンをさしている。
そのギャップがいい。
強面なのに、可愛い物好きみたいな。
年齢は50歳前後かな。
もちろん話したことはない。
僕が会社に向かうとき、マンションの建設現場の方々が一斉に休憩をしている。
そのときにスキンヘッドのおっちゃんに目がいき、気になってしまった。
いつも、その休憩時間を狙って仕事に行くようになってしまった。
僕はおっちゃんをずっとみている。
だから20mくらい離れていても、おっちゃんの胸ポケットに何があるかもすぐわかる。
もうこのおっちゃんのストーカーだ。
たまに目が合うんだけど、お互いサッと目をそらす。
こういうのってお互いが意識しすぎってことじゃないのか?
チャンスはあるのか。
ああ。
気になる。
でもこの関係もいい。
仕事に行くまでの癒しの時間。
これがなくなったら僕の心は壊れてしまうかもしれない。
マンションなんか一生、建たなければいいのに。
そしたらこのおっちゃんをずっとみてられる。
おっちゃんは僕のこと、どう思ってるんだろ?
「なんか俺のことみてる若い兄ちゃん毎日、この道通るよな?」
「ビビってんじゃないんですか?あつしさん気合い入ってますもん。」
「馬鹿野郎!!ビビってるんだったらなんでこの道通るんだよ。」
「それもそっスね。えっ。もしかしてそっち系ですか?」
「かもな。たまにいやがるんだよな。男が好きなヤツが。オレみたいなイカツイおっさんが好きなんて物好きいんだよ。Twitterで顔画像上げたら、オカマの連中がやたらDM送ってきて困ったわ。」
「男にモテてもしょうがないっスね。じゃあ今晩、仕事終わりに抜きに行きましょう。いいソープ見つけたんスよ。」
「嫁も相手してくんねーし、今晩は大いに楽しむか。オレのおごりだ。」
現実はこんな感じかな。
これはこれで仕方ない。
人生ってのはうまくいくことばかりじゃない。

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