僕はナンパをしたことがない。
そういう出会いの場だったら、声をかけたりするかもしれないけど。
道行人を誘うことなんてできない。
女性だったらアレだけど、男性だったらもっとハードルが高い。
だから、ナンパできる人ってすごいと思ってしまう。
こんなシャイで陰キャラな僕だけど、3回だけナンパされたことがある。
1回は女性。
バイト先で声をかけられた。
お客さんで来ていた女性で、
「お兄さん。終わるの何時?飲みに行かない?」
と誘われ、なんとなく飲みに行くことになった。
2回目はおじさん。
駅の構内だった。
僕はあまり降りたことがない駅でウロウロしていた。
人と待ち合わせをしていて、どこの出口で降りたらいいか迷っていた。
するとおじさんがやってきた。
「お兄さん。迷っているの?教えてあげようか。」
「すみません。東出口に向かいたいんですけど、よくわからなくて。」
「途中まで一緒に行ってあげるよ。」
「ありがとうございます。」
無事、東出口に行くことができた。
「ここですね。本当にありがとうございます。」
「お兄さん。この後、予定がなければご飯でもどうですか?」
「すみません。知り合いと約束していまして。」
そう言って、おじさんと別れた。
親切な方だったけど、やっぱりこっちの人なのかな?
3回目は確実に。
とある休みの日。
夜、僕は大阪市内にいた。
用事が終わって、家までバスで帰ろうと思い、バス停で待っていた。
すると、身なりのいいおじさんが近づいてきた。
高そうなスーツを来ていた60歳くらいのおじさんだった。
「お兄さん。ちょっと時間あるかい?」
「はい。今から家に帰るだけです。どうされました?」
「今から北新地に飲みに行くけど、お兄さん来るかい?」
「僕で良ければ。あんまり遅い時間になるとアレですけど、少しでしたら。」
そう言って、なぜかこのおじさんと北新地に飲みに行くことになった。
見ず知らずの僕を誘うなんて、変な話である。
身なりもいいし、どこかの社長さんだと思った。
話を聞いているうちに、東京の方だということがわかった。
仕事で大阪に来て、たまたまバス停にいた真面目そうな僕を誘ったとのことだった。
それでも男の僕を誘うなんて。
新地のクラブでは、お姉さんがたくさんもてなしてくれた。
女性に興味がないと気づかれたのか、お菓子をたくさん僕に持ってきてくれた。
上等そうなチョコがあり、僕はパクパク食べていた。
おじさんはカラオケを歌っていた。
昔の歌で僕はよくわからなかった。
23時が過ぎたので、僕は帰ろうとした。
すると、おじさんも帰るとのこと。
おじさんはリッツ・カールトンに泊まっていて、タクシーでそこまで送ってもらった。
リッツ・カールトンの入り口でおじさんを見送ろうとしたとき、
「私の部屋まで来ないかい?」
「ごめんなさい。明日、早いので。失礼します。」
足早でその場から立ち去ってしまった。
なんか悪いことしてしまった気がするけど、ホントに朝早かったんだもん。
でも、ナンパできる方達ってすごい。
僕もそんな男になれるかな。

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