第十一エナジー「くまことうさこ」

The Energy World エナジーワールド
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週末になった。

一人の中年が新千歳空港から羽田空港行きの飛行機に乗った。

「二ヶ月ぶりだな。」

羽田空港に着くと、すぐに電車に乗り換えた。

「母さん。なんか怒ってそうだな。竜牙は母さんと仲良くやってるかな。もうすぐ中学だし、難しい年頃かな?」

ブツブツ言いながら、竜牙の住んでいる最寄り駅に着いた。

「やっぱ出迎えなし。はあ~。歩いて帰るか。」

そのとき、中年は変わったものをみた。

「チッ。エナジーなしで地球を散歩していたら、迷子になっちまった。」

まこがトコトコ歩いていた。

エナジー無効化リボンをつけているので、エナジーが出ていない。

だから、エナジープラン以外の普通の一般人にまこの姿はみえている。

「くまちゃん。一人で散歩かい?迷子なのかな?」

「うるせーオヤジ。だが、迷子だ!!鼻を使ってもいいのだが、鼻は使わないルールを適用している。」

「なかなか自分に厳しいんだね。ちっちゃいのに感心だ。おじさんも見習うよ。どこに行くんだい?」

「竜牙の家だ。あいつの母親の飯はマジでうまい。」

「竜牙は俺の息子だけど、一緒に行くかい?」

そうだ。

この男が竜牙の父親だ。

株式会社「mogumori」で課長を務めている。

大手お菓子メーカーだ。

北海道で単身赴任をしている。

172cmの普通体型の39歳だ。

清潔感はあり、身だしなみはしっかりしている。

どうやら二ヶ月ぶりに自分の家に帰ってきたようだ。

まこと一緒に竜牙の家に帰ってきた。

ピンポーン。

「竜牙出て。お母さん。忙しいから。」

「俺だって、忙しいのに、ったく。あっ。父さん。おかえり。とまこ!!なんで?」

「ちょうど駅でまこちゃんに会ったんだよ。だから一緒に帰ってきた。」

「オレは腹が減ったぞ。」

「まこが一週間くらい帰ってこないから、地球から去って行ったのかと思ってたとこだったのに。まあいいけどよ。」

「母さんは?」

竜牙の母さんも玄関に出てきた。

しかし、竜牙の父親の顔をみない。

「も~。拗ねてんのかよ~。困った母さんだな~。」

「いつも一ヶ月で帰ってくるのに、今回は二ヶ月も待たせるなんてあなたなんて知らない!!」

「母さん。怒ってたのか。俺、全然気づかなかったけど。てか怒ってんなら、玄関まで出てこなくていいじゃん。」

「こりゃあ夜頑張らないとな。悪いけど、竜牙。今夜は早く寝てくれよ。」

「なんのことだ?言われなくても9時には寝るぜ?」

「相変わらず、ガキで良かった。これからみんなで近くのショッピングモールに行こう。外食しようぜ。」

そう言って、竜牙の父親は車に乗る準備をした。

ちなみに竜牙の母親は免許を持っていない。

「オレ、それに興味があった。車っていうんだな。遅いけど、乗ってみてぇ。」

「まこちゃんの友達も家の中にいるだよね?一緒に連れて行こうよ。」

「え~。あいつらもか~。常識ないし、オレより弱いから放っておきたいんだけどな。」

「聞こえてるぞ。まこ。」

さこはまこの背後にいた。

「お互いエナジーなしの状態なのに、やるじゃねーか。さこ。」

「お前がトロいだけだ。」

「やるか。」

「さこは別にいいぜ。」

「さこちゃん。まこちゃん。ケンカはあとにしましょ。今から美味しいものたくさん食べれるからね。いくらでも頼んでいいわ。あの人のお金だもん。」

竜牙の母親は父親を睨みながら言った。

「夫婦って仲がいいものだと思っていたが、戦うものなんだな。勉強になるぜ。」

「おまえら、なんでまよのやつ放っといるんだよ。俺がいちいち連れてくることに!!」

「もうっ。まよちゃん。かわいくおねんねしてるのに、りゅーがコロス!!」

「我が家も騒がしくなったな。良いことだ。じゃあみんな車に乗ろう。」

竜牙しか子どもがいないにも関わらず、ワンボックスカー。

竜牙と母親とまこ、まよ、さこはのびのびと乗車した。

「遅いけど、車の中ってなんかいいな~。見た目よりずっと広い。」

「なんかおじさんのニオイがする。くさい~。」

「え~とまよちゃんだっけ?ごめんね。くさくて。窓開けてね。」

シャー。(窓が開く音)

「わ~。かっこいい。」

「車で喜んでるなんてガキだな。」

「俺からしたら、竜牙もまだまだガキなんだけど。俺の同僚の子どもは小学四年生だけど、竜牙よりしっかりしてるもん。」

「そんなことより、今日は楽しみだわ~。何買ってもらおうかしら~。服がいいかしら~。財布がいいかな。それよりバッグ?宝石?全部?うふ。」

「竜牙の母親、アドレナリンが出てるな。バトルするにはいい感情だ。アドレナリンも力の源になる。竜牙も見習え。」

「別に怒ることなんてなくね?愛のやつはいつも怒ってるな。そうかアドレナリンを出すためか?」

「みんな~。もうすぐ着くぞ~。」

竜牙たちは家から車で30分ほどの大型ショッピングモールに来た。

お店やレストランがたくさんある。

着いたので、まこたちも車から降りた。

竜牙、竜牙父、竜牙母の後ろをついてヨチヨチ歩いている三匹。

当然、このショッピングモールには大勢の人がいる。

注目されないわけがない。

「ママ~。なにあれ。かわいい~。あれ欲しい~。」

「も~。かわいい~。」

「小さい足で歩いてかわいい~。」

「どこのロボットかしら?」

まこ、さこ、まよをみてざわめく人たち。

「なんかやかましいな。」

「目障りだな。」

「まよちゃんがかわいいからみんなやきもち焼いてるのかな?」

「ロボットとか言っている人がいるな。そうしよう。新種の最新ロボットの試作品を先行してうちで実験していると言っておこう。」

「さあ。最初は高級ブティックから行きましょうか?」

「母さん。まずは腹ごしらえからしよう。まこちゃんたち相当食べるんだろ?」

「ええ。そうよ。あなたの財布の中身がなくなるくらい。うふふ。楽しみね。」

「今日の母さん。こわいな。昨日は父さん帰ってくるってあんなに機嫌がよかったのに。」

「ねえ。まよちゃん。さこちゃん。まこちゃん。お昼ご飯は何食べる?洋食?和食?あっちょっと言い方が難しかったわね。ハンバーグ、ステーキ、トンカツ、カレー、パフェ、どれにする?」

「オレは肉かな。」

「さこは野菜がいいな。」

「まよちゃんはぱふぇがいいの。」

「じゃあ洋食で決まりね。」

竜牙たち一向はレストランに入っていった。

窓際の広め席に座った。

「まこちゃん。さこちゃん。ここは外だから、いつも家で食べているような食べ方だと、周りの方々にマナーがなっていないと思われるの。だから、今日はスプーンやフォークを使って食べましょうね。」

どうやら三匹はいつも犬食いをしていたようだ。

「あの小さい武器か面倒だな~。」

「その方がまこちゃんもっと強くなれるわよ。うふ。」

「そっか。オレはそれで食べる。」

「ったく。単純なまこ。人間のルールに縛られてんじゃねーよ。」

「でもさこちゃん。まよちゃん。スプーンは好きなの。なんかかわいい。」

「最近、まよちゃんはスプーンでご飯食べてくれるもんね。お利口さんね。」

「えへへへ。」

「父さん。後悔するぜ。こいつら食費半端ないから。家の野菜や米はじいちゃんとばあちゃんのところからたくさん届くから大丈夫だけど、外食はやばいぜ。」

「大丈夫だ。父さんがこの二ヶ月帰ってこれなかったのは、仕事が順調だったからだ。それで今回社長賞を取ったんだ。特別ボーナスが出た。だからどれだけ食べても大丈夫だ。」

「そうなんだ。愛人ができたのかと思った。」

竜牙の母親は父親に鋭い視線を送った。

「私もそう思ったわ。現地妻ができたのかと。それならそれでもいいけどね。地獄見せてやるから。」

「ちょっと母さん母さん。それでずっと怒ってんだな。あっ。料理が続々と運ばれてきたぞ。」

ハンバーグ10人前、カレー10人前、サラダ盛り付け10人前、大盛り巨大パフェ10人前、etc…。

戦闘態勢に入ったまことさこは、フォークとナイフを持って華麗にさばきながら、自らの口に運んで行った。

ズバズバもぐもぐ。

「なんて速さだ。芸術だな。」

「ふん。食事も闘いも同じだ。モグモグ。」

「パフェおいしい。かわいい。この丸いの。(白玉)モキュモキュ。」

「まよちゃんは天然な感じが癒されるな。」

「こいつらみてるだけで腹がいっぱいになるんだけど。」

「でも、竜牙。まこちゃんとさこちゃんをみていると思い出さないか?」

「何を?」

「くまことうさこだよ。ほら。竜牙が幼稚園の時に大事にしていたぬいぐるみの。」

「そうなのよ。私もさこちゃんとまこちゃんを初めてみたとき、くまことうさこに魂がこもったんじゃないかと思ったのよ。」

「えっ。」

その瞬間、竜牙の頭の中をある記憶が蘇ってきた。

3歳の時からずっと大事でしてきたぬいぐるみくまことうさこの記憶を。

寝るときは一緒。

ご飯食べる時も一緒。

トイレに行くときも一緒。

外に遊びに出かける時も一緒。

すぐに汚れてしまうくまことうさこ。

汚れてしまったくまことうさこを洗濯機に入れる竜牙の母親。

洗濯機に入れられて、怒る竜牙。

外に乾かしてもなかなか乾かない。

それでまた怒る竜牙。

竜牙の母親にドライヤーで乾かしてもらうくまことうさこ。

汚くなったくまことうさこはキレイになって元通り。

竜牙はうれしくなって、またくまことうさことで遊んだ。

そんな記憶、なぜ忘れていたのか。

「たしかに思い出した。ずっと連れていたよな。思い出すと、恥ずいけど。今、うちの家にあのぬいぐるみないよな?母さんらが捨てたのかな?」

「覚えてないのね。いいわ。話してあげる。あれはね。あんたが5歳になったくらいの頃ね。名古屋のおばあちゃんの家から東京まで帰り新幹線の中の出来事だったわ。あんたはいつも通り新幹線の車内で、くまことうさこで遊んでいたわ。そのときはいつもより過熱していたわ。」

「過熱ってどういうことだよ。そもそもそのぬいぐるみで何して遊んでんの?俺。」

「ずっとバトルさせていたのよ。うさことくまこで。普通の小さい男の子たちは戦隊モノのオモチャでバトルさせたりする子たちが多いと思うんだけど、竜牙はずっとくまことうさこで戦わせていたの。もうその時のバトルは通常より過熱していて、私が怒ったわ。」

「怒るほどの過熱ってなんだよ。」

「くまこやうさこを投げるのよ。ドーンとかバーンとか言って。他の方の迷惑になるでしょ?そりゃ怒るでしょ?怒ったらあんたふてくされて寝たのよ。そのままあんたは東京駅まで寝てたの。するとね、くまことうさこがなくなっていたのよ。」

「俺が投げたからじゃねーの?探したのか?」

「そりゃ探したわよ。荷物の中、辺りの座席。座席の下。全部探したわ。降りる時になっても見つからないから、あんたは泣きじゃくったわ。私は車掌さんの連絡してうさぎとくまのぬいぐるみを探してくださいってお願いしたわ。それでも見つからなかったの。」

「う~ん。その記憶だけは思い出せん。」

「竜牙。お前、ずっと泣いてたんだぞ。他のぬいぐるみ買ってやるって言っても、『くまことうさこじゃなきゃイヤだ~』って。」

「小学校入るまでは、けっこう引きずっていたと思うわ。兄弟がいないから寂しかったのかと思ったこともあったわ。」

「たぶん、そのことで母さんも俺も同じことを考えてる。」

竜牙の父親と母親は、料理を格闘のように食べているまことさこをじっとみた。

「なんだよ。二人してこっちみて。」

「さこちゃんとまこちゃんじゃないの?くまことうさこって?ぬいぐるみに魂が宿って、竜牙の元に帰ってきてくれたんでしょ?」

つづく。

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