さこは竜牙のアバター、愛、良太を一瞬にしてどこかの惑星に飛ばした。
「ここは宇宙!?大変!!シールド!!」
愛は慌てて、シールドを展開した。
良太も愛に見習ってシールドを出した。
「愛も良太も何をそんなに慌てているんだ?」
「ホント竜牙はバカね。」
「この惑星は最下級のミクロの星だ。エナジープランたちも知能がないので、弱い。お前らにお似合いだろ?とりあえず、この星で30分生きろ。それだけだ。30分経ったら、また迎えにきてやる。」
そう言って、さこは消えた。
「ということはシールドを張り続けていればいいのね。ふうっ。簡単だわ。」
「それにしてもここどこなんだろうな?砂漠しかない。」
竜牙たちがさこに強制的に連れてこられたのは、惑星「チョコ・ジャバ」。
地球から遠く離れた銀河系の中の惑星。
チョコ・ジャバは砂漠の星。
生物も多くない。
地球でいうゴキブリやドブネズミのような生物が少量のエナジーを発し、エナジープランとして生息している。
小動物たちはエナジーを有しているが、竜牙たちの敵ではない。
竜牙たちの生み出し、エナジーパワーやエナジーマジックの方が破壊力が上だからだ。
しかし。
「竜牙。あんたエナジーパワーだけのシールドしか展開してないけど、体大丈夫なの?」
「別に普通だよ。そっか。地球じゃない星だから、この星。酸素ないのか。」
「そうよ。この星は主に二酸化炭素しかないみたい。だから、シールド内で自分で酸素を作り出すしかないのよ。それって、すごくしんどいのよ。わかる?バカ竜牙。」
「いちいちうるさい女だな。」
「竜牙。それだけじゃないんだ。この星。地表の温度が地球よりはるかに高い。200℃くらいはある。シールドにエナジーマジックで熱に耐性を備えなければならない。これもけっこう疲れるんだ。」
「おいおい。大丈夫かよ。おまえら。」
最初の5分くらいは、こうやって三人で普通に話ができたんだ。
10分が経過すると。
「はあはあはあ。」
「ハアハア。」
愛も良太も息切れをしてきた。
「シールドを出すだけなら、今までも修行とかでしてたんだろ?なんでそんなにしんどそうなんだよ!!」
「甘かったわ。この星。重力もかなりある。だから、この星の生物はむやみやたら動かないのね。この重力にも耐性をシールドに備えると、エナジーの消費量が計り知れない。限界だわ。」
「愛!!シールドを解くなよ!!死ぬぞ!!」
「やばいのか!!俺、どうしたらいい?」
「バカ竜牙。あんたなんかにどうすることもできないわよ。さこ様のような移動術をあんたが使える?ホントバカね。ああ。しゃべるだけで、力が。」
愛は立っていることもできず、座り込んだ。
良太の方が余力はありそうだが、二人ともとても30分など耐えれる雰囲気ではない。
竜牙は思った。
辞めさせなきゃ。
さこに地球に戻してもらわなければ。
「俺、地球の俺に、さこを探してもらう。そして、地球に戻してもらうよう頼んでみるよ。」
公園にいたアバターじゃない竜牙は、急いで竜牙の家に帰った。
さこたちが帰っていると思ったからだ。
「母さん!!さこはいる?」
「えっ。さこちゃん?帰ってないわよ。さっきまこちゃんだったら帰ってきてたけど。」
「よし!!まこに頼もう。」
竜牙は2階の自分の部屋に向かった。
そこにまこがいると思ったからだ。
「なあ!!まこやばいんだ!!」
「何がだ?」
「俺のアバターと同級生が修行でさこに変な星に連れて行かれたんだけど、二人ともシールドが切れそうで死にそうなんだ!!どうにかしてくれ!!」
「じゃあ死むしかねーんじゃね?」
「ちょっとまこ。本気で言っているのか?」
「当たり前だろ。修行で命をかけるのは当然のことだろ。命もかけずに強くなろーって。どんだけ甘いんだ?この宇宙、リスクも背負わずにリターンを求めるなんて、理不尽じゃねーか?そんなの宇宙の常識だと思っていたけど。」
「そんなのわかんねーよ。」
「はぁ。ホントに竜牙はガキだな。さこは非情だが、勝機ないことはさせねーよ。オレと違って。どうせ、シールドの訓練だろ?」
「なんかそうみたい。俺だったらシールド覚えたてだからわかるけど、なんでアイツらにそんなことするのか不思議だけど。」
「じゃあそいつらに言っとけ。エナジーを回復させるにはどうするか?それ次第だと。」
「わかった。」
まこから聞いた話をアバターの竜牙は、愛と良太に伝えた。
「エナジーを回復させる方法?」
「俺らの初等部だったら、エナジーある生物や物質を取り込むことって習ったな。でも、エナジープランの人間を食べてしまったら犯罪だし。家畜を強制的にエナジープランにして、食べるとエナジーを回復できるらしいけど。日本にはエナジープランの家畜なんて少ないから、エナジー部隊の一部の人たちしか食すことはないと思うけど。」
「ということは、この星にいるエナジープランを見つけて、食うしかないってこと?」
「そういうことだな。」
「どんな生き物かしら。グロくないといいけど。」
「お前ら、元気ないだろ?俺が頑張って見つけるよ!!」
竜牙のアバターは、この砂漠地帯を全速力で駆け抜けた。
エナジープランの生き物を探しながら。
「なんで竜牙はあんなに元気なのよ~。ムカつくわ。こっちは死ぬほど疲れているのに。」
「竜牙いい感じの食べやすいエナジープランを見つけてくれることを祈ろう。」
「そんな悠長なこと言ってる時間ないじゃない。痛っ!!」
ブシュッ!!
愛の腕がいきなりなにものかに切られて、血が飛び出た。
シールドのエナジーパワーが弱くなっており、簡単に愛のシールドを貫かれた。
「何よ!!ネ、ネズミ!!」
そこにはエナジーを纏ったツノが生えたネズミのような生物がいた。
どうやらこの星の生物らしい。
「チューチュー。ヂューヂュー!!」
ネズミは大きな声で鳴いた。
辺りからたくさんネズミが現れた。
30匹くらいいる。
大きさは地球のドブネズミくらい。
地球のそれと同じようで清潔さが感じられない。
「ちょっと!!ハムスターならかわいいけど、ちょっと無理!!」
「やばい!!こいつら、向かってくるぞ!!」
ネズミたちは、ツノにエナジーを集中させ、愛と良太に突進してきた。
ズンズン!!
良太も愛も集中してシールドにエナジーパワーを強化させると、こんなネズミたちの攻撃など楽々防御できる。
「もうっ。ネズミ嫌い!!死になさい!!『ヴュックジャガ』(電撃)!!」
愛は、広範囲に電撃を発生させた。
バリバリバリバリ!!!!
「出ろ!!俺の『クハンディー』(エナジーで生成された斧)!!」
良太はエナジーで大きな斧を創り出し、ネズミたちを切り刻んだ!!
ザクザク!!ブシュー!!
愛の電撃で7体のほどのネズミを感電死。
良太の斬撃でネズミ9体を斬殺。
だが、まだ15~16匹ほどいる。
「ヂュー!!!!!!」
ネズミは仲間が殺されて、怒っている。
ネズミたちのツノの突進が激しくなる。
ズンズンズンズン!!!!
しかし、それよりも愛と良太の体調の悪化の方が深刻だった。
「ヒューヒュー。」
全身疲労からか、まともに呼吸ができない。
二人とも過呼吸になっている。
(ネズミどころじゃない。攻撃にエナジーを使ったのが、仇になった。もう、シールドが練れない。)
二人は頭の中で思った。
ネズミたちの攻撃で愛と良太のシールドが破壊されつつあった。
(だめだ。シールドが解ける。殺される。ネズミがいてもいなくても死ぬ!!)
ネズミのツノが愛の顔面に突き刺さりかけたとき、
グチャ!!!
「あきらめんな!!二人とも!!こいつらは俺がぶっ殺す!!」
どっかに行っていた竜牙が戻ってきたのだ。
どうやら何も生き物は見つからなかったらしく、仕方なく帰ってきたみたい。
竜牙は足でネズミを踏み潰した。
「うっ。気持ち悪い。俺、ヘビとか爬虫類は好きなんだけど、ネズミは苦手。」
「(竜牙ありがとう。)」
愛も良太は声も出ないが、それらしいことを言った。
「あとは任せろ!!」
竜牙がネズミたちにエナジーの籠った拳や蹴りを喰らわし、息の根を止めていった。
グチャグチャ。
「あっ。おまえらこのネズミを食えば、エナジー回復するんだっけ?食え!!」
ネズミのぐちゃぐちゃになった死骸を愛たちに竜牙は手渡そうとした。
「(そんなん食べるんだったら死んだ方がマシ。)」
「って言っているような嫌そうな顔してるな。どうしよう?焼いたらマシかな?火出せるのかな?」
竜牙はエナジーで火を出そうと念じてみた。
「『アギャ』(火)!!」
ボッ。
竜牙の手のひらから少量の火が出た。
その火を使って、ネズミをあぶった。
ジュー。
だいたい火が通った気がしたので、意識を失いかけている愛と良太の口の中に無理矢理放り込んでやった。
「食え!!飲み込め!!」
「(やめてー!!)ゴックン。マズイ!!ヤバいわ!!マズイわ!!」
「不味いけど、このネズミたちエナジープランだから、エナジーの回復作用がある。とりあえず、シールドを継続して張れるな。」
「私もさっきよりはだいぶマシ。あと数十分ならシールド張れそう。でも、竜牙。あんたは絶対に許さない。死よりも恐ろしい目に合わせてやるんだから。」
「助けたのに、なんでだよ!!」
そんな中、30分経ったようでさこが現れた。
「おっ。おまえら生きていたか。しかもなんか成長したっぽいな。弱いなりに。地球に戻るぞ。」
さこに連れられて、三人は安堵の表情で地球に戻った。
コメント