初めに言っておくと、僕のお話ではない。
どうせ、お前といつもの山本の話だろ?
っと思われたあなた。
違うんです。
僕の話じゃないんです。
別のトラックドライバーさんの話。
でもこの話を聞いて、僕は心に決めてしまった。
今後の僕にも大きく関わる話。
僕は仕事先のトラック運転手の方とはほぼ仲良し。
山本さんだけ少しギクシャク。
だから仕事中にも関わらずたくさん話してしまう。
仲の良いドライバーさんの一人。
林さん。
年齢は50歳前。
体格は中肉中背。
お腹がいい感じで出ている。
体型だけをみると、僕も好きな体型だ。
おっちゃんというよりお兄さん。
優しい人だ。
そんな林さんからこんな話を聞いた。
「ちょっと聞いてくださいよ。鈴木さん。」
いつも元気な林さんがこんなことを言うのは珍しい。
「どうしたんですか?」
「ここに来る前に別の会社に荷物を届けていたんですけど、変なものをいただいたんです。」
「どんなものですか?僕もよくお土産とかあげたりしてますけど。」
「鈴木さんはちゃんとしたお土産をくれるじゃないですか。もう一つの会社で去年入社した若い新入社員がいて、鈴木さんと同じくらい仲良くなったんです。その子からもよくお菓子とかもらうんですが、今日もらったケーキが開けてみると、食べかけだったんです。」
「えっ。どういうことですか?」
「実はそこの職場で少し噂を聞いていたんです。その子はゲイだと。職場の女の子が、私のことタイプだと話していたらしいんです。」
たしかに。
林さんは体つきはいい。
優しい。
気配りもできる。
年上好きのゲイだったら惚れるのもわかる。
でも。
「すごく気持ち悪いです。このケーキ。なんで食べかけなんですかね?そういう趣味なんですかね?」
「捨てたらいいと思いますよ。ゲイで林さんのことが好きなんだったら正々堂々、告白すればいいんですよね。林さん。ちゃんと断るでしょ?」
「もちろんですよ。ゲイの人たちに偏見あるわけじゃないですけど、私はゲイではないので。」
その新入社員の子が、どういう経緯で林さんに食べかけのケーキを渡したのかわからない。
ただ僕は胸が痛かった。
このやりとりを僕と別のトラックドライバー山本さんの関係で連想してしまったからだ。
僕も片想いの山本さんにこんなふうに思われていたら、なんという屈辱なんだろうと。
なぜ、屈辱と感じるのか。
僕は恐ろしくプライドが高いのか。
こんな屈辱を感じるなら、山本さんと付き合えなくてもいい。
気持ちを伝えることは絶対に嫌だ。
なぜか、そういうふうに僕の気持ちは変化した。
僕が今まで、山本さんにしてきた贈り物やお土産、山本さんにしてしまったセクハラの数々。
それらを第三者に言われていたとすると、すごく不快だ。
「俺がよく行っている取引先があるんだけど、そこの鈴木がほんとに気持ち悪くて、俺の体をよく触ってくるんだよ。俺、ゲイじゃないし。気持ち悪いんだよ。年賀状も送ってくるし、ストーカーかよ。」
とでも言われていることを想像するだけで、僕はたまらない気持ちになる。
悔しい。
でもそれは僕に魅力がないから。
ゲイとかストレートとか関係ない。
とうぶん、恋愛のことは考えない。
そういう方向性でいこう。


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