僕はチャリで仕事で向かっていた。
「すごい風。雨もヤバイ。でも電車停まっているし、自転車で向かわなきゃ。」
雨がものすごくなり、道路が川のようになりだした。
「うわ。これじゃあ自転車が走れない!!こんなん仕事どころじゃない!!休めば良かった。行かなきゃ良かった。」
僕は次第に足元から下半身まで水に浸かり始めた。
「足が水に浸かってしまった。水の勢いがすごい。このまま僕は死んでしまうのか。」
すると、
「リョウタ!!こっちだ!!自転車は捨てて、早く乗れ!!」
急に山本さんがトラックで現れ、僕を無理やり助手席に乗せた。
そうか。
もう僕は勤務先近くまで来ていたんだ。
そして、山本さんのいつものルートに入っていたんだ。
だけど、もう。
「山本さん。水の勢いがすごいよ。もうトラックも走れなくなる。」
「走れるだけ走る。できるだけ高いところに。大阪の高いところは、たしか谷町六丁目付近。そこまで走るぞ。」
なんか今日の山本さん。いつもより男らしい。だけど、無理だよ。この雨と洪水じゃあ。谷町付近だって、洪水状態だよ。
プスン。
トラックの中に水が入り、車は動かなくなった。
「くそ!!こんなところで!!」
水がトラックの中にまで浸水してきた。
「仕方ない。天災だし、誰も悪くないよ。だけど、僕は最期に山本さんと一緒に入れて良かった。」
「リョウタ。それって。」
「うん。僕、山本さんのことずっと好きだったんだ。あっ。好きっていうことは以前にも伝えたな。愛してるんだ。今でも。この世の誰よりも。」
クチュクチュ。
山本さんは何も言わず、濃厚な口づけをしてきた。
初めてするキスで、いきなり僕の口の中を舌で舐めまわすのは驚いたけど。
最期だからいっか。
僕は山本さんの腕の中で眠った。
永遠に。
って、台風中に思い描いてた僕はなんて不謹慎なんだろう。
本当にごめんなさい。

コメント