「うわあああ~。地球を貫いた!!爆発する!?」
「この星。エナジーの影響受けないだろ。大丈夫だ。」
地球を貫いたかのようにみえたエナジーの光線は、そのまま地球をすり抜けていった。
「今のはなんだったんだ?」
「ただのエナジーショットだ。エナジーを集めて放っただけ。おまえそんなこともわからないのか。」
「まあ待て。まこ。ちょうどいい。こいつにこの星のことを聞こう。ちょっと特殊な星だしな。」
「お前らは、地球に攻めて来たんじゃないのか?」
「地球っていうのか。こんな星、滅ぼしてどうなる。大したエナジー持ってるやつもいないし、さっきみたいな雑魚が何万匹いたって宇宙にとったら痛くも痒くもない。」
「地球をたまたま、この『まよ』が見つけたんだ。」
「まよ?」
緑のトカゲの口から顔を出している白くまが話しかけてきた。
「まよちゃんなの。まよちゃんにはわかったの。ここに星があるってことを。」
「宇宙から見たら、地球ってすぐわかるだろ?青い星って珍しいだろ?」
「水に覆われている星は珍しいな。恒星との距離感が抜群だった影響だな。でも、この地球は宇宙から何もみえないんだ。」
「えっ。透明ってこと?」
「何者かの能力だな。エナジーを発していると、地球が見えないらしい。だから、オレも『さこ』もまよも体中のエナジーを消したんだ。すると、この地球が急に現れて思わずこの星に飛び込んだってわけよ。」
「そっちの白いウサギが『さこ』って言うのか。」
「おまえじゃ話にならなさそうだから、エナジーがもっと使えるやつ呼んでこい。もっと聞きたいことがある。」
「えっ。俺がこの星で一番強いんだけど。」
「そんなわけあるか。さっきの水龍ってやつの方がずっとエナジー高かったろ?」
「そんなん俺、わかんないし、俺とさっきのやつ戦っていたらどうなっていたかわからないし。それよりさっきのエナジーショット教えて欲しいんだけど。」
「手のひらにエナジーを集中させて、放つだけだって。」
「そんなんでできるのか?練習してみよ。」
「んで、さこどうするんだ?エナジー使える強いやつがこいつだけらしいけど、こいつにこの星のこと聞くか?」
「エナジーの気配は感じる。たしかに数は多くない。しかし圧倒的に弱い。そいつらに聞いたって、そのガキに聞いたって大差ないと思うぞ。とりあえず、この星案内しろ。」
「俺は竜牙だ。お前らこそ何者なんだよ。」
「オレは『まこ』だ。この宇宙で一番『エナジーパワー』を司る者だ。宇宙で一番強いと言っても過言ではないな。オレほどじゃないが、こっちのうさぎは『さこ』。宇宙で一番『エナジーマジック』が使える。戦ったら、オレの方が強いけどな。」
「バカか。お前のようなパワーバカの単細胞に負けるか。こっちのトカゲに食われてるのが『まよ』だ。」
「まよちゃんなの。よろしくなの。まよちゃんは宇宙で一番かよわいの。」
「なるほど、じゃあお前は弱いんだな。」
「まよをいじめたら、お前殺すぞ。」
「はっ?」
さこはまよを溺愛している様子だ。
「竜牙だっけ?お前のその体、エナジーで作った体だろ?中身がスカスカだからな。本体は?」
「公園でけんすいしてるけど。でもお前らエナジー使えるから、俺と会えないと思うぜ。」
「そうだったな。エナジーを発するとこの星に影響を及ぼせない条件だったな。さこ、いちいちエナジー発するの止めるのめんどくさくねーか?」
「じゃあ良いものを作ろう。」
さこの手のひらに三つのエナジーの光が現れた。
「何をするんだ?」
「作るんだよ。エナジーを無効化するものをな。」
三つのエナジーがより一層輝き出した。
「『シリンティ』(物質創造化)!!」
さこは三つのリボンを創り出した。
「そのリボンなんだ?」
「自身の体から発するエナジーを無効化するリボンだ。まよが好きそうなデザインにしてやったぞ。」
「かわいいリボン。さこちゃんありがとう。まよちゃんつける。」
まよがさこからもらったリボンを耳につけた。
すると、高度一万メートルから真っ逆さまに落下した。
「そういうことか。オレもつけるか。」
そう言って、まこは首元にリボンをつけて、地上に落っこちていった。
ズドドドーーーン!!!
「あいつらバカじゃねーか?エナジー無効化ってさこが言ってたのに。」
「さこらにとったら、エナジーがないことが異常なんだ。察しろよ。」
竜牙(アバター)とさこはゆっくりまことまよが落下した方向に、低空飛行して降りていった。
公園でけんすいしていた竜牙は驚いた。
まことまよが落下したのは、アバターじゃない竜牙がいた公園だった。
「こんな下が見えなくなるような穴ができて大丈夫かよ。」
「大丈夫だ。」
まこは元気そうにぴょんぴょん跳ねて出てきた。
「これが本当の地球か。変わった建造物だな。ここはなんだ?闘技場か?」
「ここは公園。子どもとかが遊んだり、おじいちゃんやおばあちゃんが運動したりするとこ。」
「お前が竜牙の本体か。さっきのやつよりもっと弱そうだな。」
「認めたくねーけど、こっちの俺は普通の人間なんだ。普通の子どもと変わらねーぜ。悔しいけど。」
「さっきのも十分弱いぜ。」
「まよちゃん。穴から出れないのー。」
「ざけんな!!早く出てこい!!」
空から急いでさこが降りてきた。
バコッ!!
さこはまこを蹴り飛ばした。
「さっさと助けろ!!まよ。大丈夫か?」
さこは穴に入って、まよを抱えてピョンピョン穴から這い上がってきた。
「テメー。さこ!!殺す!!『アナリッシュ・ウーマロ・アギャ(宇宙抹殺の火)!!」
まこは手で構えている。
「まこ。やばくねーか?お前ら、エナジー使えなくなったんだろ?俺でもわかるぞ。」
「そうだった!!クソ!!リボン取ったら、覚えとけよ!!さこ!!」
「お前に負けねーよ。とりあえず、これからどうしようかな。この星の王はどこにいるんだ?」
「バカゆーなよ。会えるわけないじゃん。」
「そうなのか?どこの星のやつらもさこらが来たら、盛大にセレモニー開いてくれるのに変な星だな。」
「今日はとりあえず俺んち来いよ。ウロチョロされると恥ずかしいし。」
「恥ずかしいの?まよちゃんがかわいいから?」
「ちげーよ!!お前らみたいな生き物がいないの。動物なのに人間の言葉話してたらまずい世界なの!!」
「人間至上主義か。程度が低い。くだらん!!宇宙ではエナジー至上主義が常識だ。動物でも人型でも関係ないだろう!!」
「俺にゆーなよ。ほら。夕方になってきたし、俺の家に行くぞ。頼むから俺以外の人とは喋らないようにしろよ。」
「なにこれ~?ぬいぐるみさんなの~?かわいい~。動いてる~。」
公園にいた幼稚園児たちがやってきた。
「これはロボットのくまさんとうさぎさんとトカゲさんだ。俺のだから触らないでね。」
「ロボットってなんだ?」
「褒められてる気がしねーな。」
「まよちゃん。トカゲさんじゃなーい。」
竜牙はなんとか幼稚園児たちを騙し、見事に追い払うことができた。
竜牙の家に帰る道中も近所の人たちに目撃され、恥ずかしい思いを何度もした。
「こんなことになるんだったら、リュック持ってきたら良かった。」
「弱いくせにうるさい生物だな。みんなぶっ殺したくなるな。」
「それにしても人型の生物多すぎだな。何匹くらいいるんだ?」
「俺たち人間のことだよな?この星に60億人いるらしいぜ。」
「はっ?知的生命のエナジーなしがそんなにいるの?おかしな星だ。」
「エナジー使えるミクロはそんなにいねーよな。普通。」
「お前ら何言ってんだ?ミクロってのは敵どものことだろ?」
「いや、お前もミクロだ。」
「えっ?」
「オレたちのように強大なエナジーを保有していないものはみんなミクロだ。」
「俺は認めねー。俺はミクロじゃない。」
「どうでもいい。お前の住みかはどこだ?」
「もうすぐだ。俺の母さんにバレると面倒だから二階の窓から俺の部屋に入ってくれ。あとでゴハンご馳走するから。」
「こんな変わった星の飯か。興味あるな。」
竜牙の家に着いた。
竜牙の家は東京都町田市の住宅地にある。
一軒家で二階建て。
父親は大手お菓子メーカーの株式会社「mogumori」で課長を務めている。
現在、竜牙の父親は北海道に単身赴任している。
だから竜牙の家は、竜牙の母親と竜牙が二人住んでいるだけである。
兄弟はいない。
ペットもいない。
竜牙以外の物音がすると、すぐに第三者の存在がバレてしまう。
細心の注意を払わないと。
「ただいま。」
「あら。竜牙おかえり。もうすぐご飯よ。手を洗ったらキッチンにいらっしゃいね。」
「俺、先に宿題する。明日の宿題やってないし。」
「竜牙。大丈夫?あんたいつも宿題なんかしないじゃない。もしかして、あれ?中学受験したいのかしら?愛ちゃんと同じ中学行きたいわよね?でもあんたと愛ちゃん頭の出来が違うから母さん心配よ?」
「(ったく。いつも通りベラベラしゃべりやがる。)愛は関係ないだろ。とりあえず宿題したいから俺の部屋行ってるから。」
そう言って、竜牙は二階の自分の部屋に向かった。
まことさことまよは竜牙の言いつけ通り、家の壁をよじ登り、竜牙の部屋の外側の窓に張り付いていた。
「(認めたくないが、少しかわいい光景。)鍵開けるからな。」
ガチャ。
「これがお前の家か。せまいな。」
「お前ら体が小さいんだから、俺の部屋でもじゅうぶん大きいだろ?」
「なんかかわいくない部屋。まよちゃんはもっとかわいいところがいい。」
「そうだな。まよ。さこが手伝ってやるぞ。」
「あんまり大きな声出すなよ?母さんに気づかれたら大変だ。」
「そんなことより何者かの気配がするぞ。エナジー使わなくても足音と空気とニオイでわかる。近づいてきてる。」
「えっ。」
「敵か?オレはエナジーなしでも負けないぞ。」
余談ですが、ちょっとまよの想像がつきにくいとご指摘を受けましたので、少し絵を描いてみました。
僕の画力は大変である。
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[…] つづく。 […]