第二エナジー「襲来」

田中先生は、俺に包丁を振りかざしてきた。

俺は、理科室のイスを田中先生に投げつけ、距離を取った。

もちろん俺のアバターは、田中先生を向こうに押し付けようと手で抑えようとしているが、エナジーを出していない先生を掴むことができない。

これは、やばい。

俺は生まれて初めて、恐怖を感じた。

今までは、ミクロどもに襲われていたのが、俺のアバターだったから俺自身ではない。

それが、俺本人が襲われることがこんなにも怖いことだったなんて。

死ぬかもしれないということがこれほど怖いことなんて知らなかった。

俺のアバターじゃどうすることもできないとわかった俺は、理科室を飛び出し、助けを求めた。

「誰か!!助けて!!田中先生が包丁を持ってる!!俺を殺そうとしてくる!!」

俺は、大人たちがいる職員室に向かった。

「唯竜牙!!止まりなさい!!殺す!!止まらなくても殺す!!」

俺の叫び声で周りが騒がしくなってきた。

「田中先生が包丁を持ってる!?」

「きゃー。」

「ぎゃあーーー!!」

「殺される!!」

「みんな!!外よ!!外に逃げなさい!!これは避難訓練じゃないのよ!!全速力で逃げなさい!!」

学校内はパニックになりながら、先生たちが状況を把握し、生徒たちを逃がそうとしている。

俺が走って職員室に向かっていると、愛と良太がいた。

「おまえら何やってんだ!!田中先生、包丁持ってんだぞ!!逃げろ!!殺されるぞ!!」

「えっ。田中先生が?わかった。あんたはどうするの。竜牙?」

こんなときに何をそんなに落ち着いているんだ。

この女は。

「俺は職員室に行く。やばいだろ!!ガキどもだけじゃどうしようもない。大人呼んで、警察来てもらわないとなんもできないだろ!!」

「竜牙のそんな取り乱したところ、初めて見たわ。わかった。私もクラスのみんなや他の生徒たちを見かけたら避難をさせるわ。」

「俺もそうするよ。竜牙。気をつけてな。」

そう言って、愛と良太は俺と逆側を走っていった。

そっちには、包丁を持った田中先生がいるのに馬鹿かあいつらは。

竜牙は職員室に着いた。

勢いよく扉を開け、叫んだ。

「先生!!田中先生が俺に包丁を突き出してきた!!早く警察呼んで!!」

「この騒ぎで大体状況はわかっている。唯くん。落ち着きなさい。先生たちと一緒に外に避難しよう。」

そのとき、おびただしい叫び声が聞こえた。

「ぎゃああああああああああああ~。」

「この声は田中先生だ!!」

竜牙は職員室の先生たちを振り切って、声のする方に向かっていった。

「唯くん!!止まりなさい!!危険よ!!」

たしかに。

危険だ。

エナジーが効かない相手には俺は無力だからだ。

無力な自分が許せなかった。

俺がこの世界を守っている気になっていたのに、ただの大人一人で何もできず恐怖で逃げている自分が許せない。

逃げてから、気づいた。

やっぱり戦おう!!

理科室でも、机とかイスとか投げてもっと抵抗したらよかった。

竜牙が叫び声のあった方に向かうと、理科室の近くで田中先生が倒れていた。

田中先生に触るのは怖かったが、どうやら気を失っているようだ。

職員室からやってきた先生たちが田中先生の様子をみた。

「田中先生の体中に、打撲の跡がある。どこかにぶつけたのか。不自然な。誰かに殴られたわけでもあるまいし。とりあえず、救急車を。」

田中先生は救急車で運ばれていった。

それにしても、誰かに殴られたとか。

先生たちが田中先生を見つけるまでは、学校の生徒しか田中先生に会っていないはず。

包丁を持った先生を、小学生が立ち向かうとも思えないし。

俺のアバターが通用するなら、楽勝だったんだけど。

田中先生を倒したのが、愛や良太だったらウケるんだけど。

あいつらもただ少し勉強とスポーツができるただの小学生だからな。

エナジーを使える俺とは比べものにはならない。

でも、俺も少しへこんでいる。

自分の弱さを感じてしまったから。

もっと強くならないと。

次にこんなことが起きて、対応できるように強く。

この後、学校は大変だった。

警察もたくさんきた。

テレビ局の記者もたくさんやってきた。

先生に襲われたのが俺だったから、記者の人たちに追い回されて大変だった。

学校の他の先生からは、記者の人たちとしゃべったらダメと注意を受けた。

でも、俺はこんなことどうでもいいんだ。

負けた自分が、逃げた弱い自分の方が嫌だから。

だから、俺はこの事件以来、筋トレを始めた。

アバターの俺は強いけど、生身の俺も強くなければ、自信が持てない。

この世界を守るのは俺だと自覚を持ちたいんだ。

せっかくこんな能力を持っているのだから。

この事件から一ヶ月が経った。

今は6月。

梅雨に入った。

田中先生のニュースはテレビで見なくなった。

報道では、

「私は知らない。そんなことしていない。何かの間違いよ!!無実よ!!」

っていう内容が流れていた。

俺にはどっちでもよかった。

エナジーを使う何者かに操られていたのか、演技なのか、刑務所から出てきて、また俺を殺しにくるのか。

だったら、話は簡単だ。

返り討ちにするだけのこと。

今日は日曜日。

梅雨なのに、珍しく晴れている。

俺は家の近くの公園でけんすいをしている。

けんすい500回終わるまで帰らない。

俺がトレーニングしている間、俺のアバターも街中のミクロどもを排除する。

また先生みたいなやつを生み出さないためにだ。

そんな俺のアバターが空から気配を感じた。

何か、重い気配感じる。

間違いなく、強い。

三匹の生物が高度1万メートルから、地上に降ってきている。

「ホントにこんな星が存在するとはな。」

「エナジーを消さないと入れない星か。そんな星を見つけた『まよ』はえらいぞ。」

「なんかね。変わった雰囲気がしたの。だから行きたくなったの。」

アバターの竜牙は自由自在に空を飛ぶことができる。

こいつらの気配を感じ取った竜牙のアバターは、奴らの元に向かって飛んだ。

ビュン!!

「お前ら、排除する!!」

竜牙は三匹の中の一匹、茶色のクマのような生物に殴りかかった。

ブワッ!!

殴りかかったはずだったが、消えていた。

「お前はなんだ?この星のミクロか?」

茶色のクマは、空中にピタッと止まっていた。

「お前も空を飛べるのか。俺はミクロじゃねえ!!お前らこそ、ミクロだろ!!ちっさいし。」

三匹とも、体長が30cmほどの小さな生物だった。

一匹が茶色クマのような生物。

赤いマントをしており、体は戦隊モノのような赤のスーツを着ている。

もう一匹は白いウサギのような生物。

肌が白いのに、白いスーツを着ている。

最後の一匹は見かけは緑のトカゲ。

緑のトカゲの口の中から、白くまの顔がある。

気持ち悪い奴ら。

ぶっ殺す。

竜牙は、三匹に回し蹴りを喰らわせた。

シュッ!!

だが、もういない。

攻撃は当たらない。

「珍しいな。『まこ』。普通、こんなやつ一瞬で消すだろ?」

「ん~。ゴミすぎるというか、素粒子にもなりきれていないやつを殺しても何も思わないし。とりあえず、この不思議な星のこと聞きたいじゃん?こんなやついつでも殺せるし。」

「なめやがって!!」

竜牙は、拳のラッシュを三匹にまとめて喰らわせた!!

「大きいのがきたな。」

ドン!!

竜牙(アバター)と三匹の真下の海から、巨大な竜が現れた。

「我は水龍。この地球を守るミクロ巨神の一人。貴様らは、他の星々の侵略者じゃな。殺す!!」

水龍は、水の塊を口に集合させ、巨大な水の塊を竜牙と三匹に向けて放った。

「パネッケシーズ!!(水の口撃)」

ブオッ!!

竜牙と三匹に直撃した。

はずだった。

水の塊は、三匹に当たらず、自ら反れていった。

「なに!?」

「こういうゴミだったら、やや素粒子になりかけだから、殺してもいいかな。」

茶色のクマは、掌に光を集め始めた。

エナジーだ。

大量のエナジーが、クマの掌に集まっている。

クマは30cmくらいの大きさなのに、山のように大きい水龍並みの大きさのエナジーが集まっている。

「死ね。」

その集まったエナジーを水龍に放った。

「ぎゃああああああああああ~。」

と叫ぶ暇がないほど、一瞬で蒸発した。

その光線は地球を貫いた。

つづく。


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